少年野球で起こる肘のスポーツ障害
こんにちは、宮本です。
このブログでは、少年野球などで発症するスポーツ障害の中でも、特に肘に起こる症状について書いています。
今回のテーマは
野球肘
です。
「野球肘」と一言で言っていますが、実はこれは正式な病名ではありません。
上腕骨内側上顆炎をはじめ、野球の投球動作が原因となって起こる肘のさまざまな疾患を、総称して野球肘と呼んでいます。
だからこそ、
・なぜ肘が痛くなるのか
・どこに負担がかかっているのか
を理解するには、肘の構造を知ることがとても大切になります。
今回はその第一段階として、
肘の解剖学的な構造と、
野球肘が起こる基本的な仕組み
について説明していきます。
少し専門的な話も出てきますが、できるだけ噛み砕いて書いていきますので、最後まで読んでもらえたら嬉しいです。
野球肘とは出典

肘の解剖学
まずは肘の構造からです。
肘は、
上腕と前腕をつなぐ関節
で、主な役割は
曲げる・伸ばす
という動きになります。
上腕には
・上腕骨
前腕には
・橈骨
・尺骨
という2本の骨があります。
つまり肘は、
上腕骨・橈骨・尺骨の3本の骨で構成される関節
ということになります。
これ、案外知らない方が多いです。
「肘って1個の関節ちゃうん?」
と思われている方、けっこういらっしゃいます。
尺骨と上腕骨の関係
まず注目してほしいのが、
尺骨と上腕骨の関係です。
尺骨の上側には、鉤爪(かぎづめ)のような形をした突起があります。
この部分が、上腕骨の後ろ側にあるくぼみに、すっぽりはまり込む構造になっています。
この関節の形を
蝶番関節(ちょうばんかんせつ)
といいます。
「蝶番」
別の読み方をすると
ちょうつがい
です。
これなら聞いたことありますよね。
ドアについてる、あれです。
ドアが一定の方向にしか動かないように、
肘も
曲げる・伸ばす
という動きがメインになります。
肘を曲げたり伸ばしたりするときに動いているのは、
この
尺骨と上腕骨の蝶番関節
です。

橈骨は何をしているのか?
では、もう1本ある橈骨は何をしているのでしょうか。
橈骨と上腕骨の関係は
球関節
と呼ばれます。
上腕骨側は丸く盛り上がった形、
橈骨側はそれを受け止めるように丸くへこんだ形をしています。
さらに、
橈骨と尺骨の間には
車軸関節
があります。
これは名前の通り、
軸を中心に回るような関節です。
この2つの関節のおかげで、
肘から先を
・内返し
・外返し
する動きが可能になります。
手のひらを上に向けたり、下に向けたりする動きですね。
筋肉はどこについているのか
この3本の骨に、
・肘を曲げる筋肉
・肘を伸ばす筋肉
・内返し、外返しをする筋肉
が付着しています。
そして、野球の投球動作では、
これらすべてが連動して働きます。
投球動作は全身運動
ここで大事な話をします。
投球動作は腕だけの動きではありません。
下半身で地面を蹴り、
その力を体幹に伝え、
肩、肘、手首へと流し、
最後に
人差し指と中指
からボールへ力を伝えます。
特に、
加速期からフォロースルー
と呼ばれるフェーズでは、
・手首を曲げる筋肉
・前腕を内返しにする筋肉
が強く働きます。
ここで代表的な筋肉を2つ紹介します。
尺側手根屈筋
尺側手根屈筋は、
上腕骨内側上顆と尺骨肘頭後面上部から始まり、
豆状骨、豆中手靭帯、第5中手骨、有鈎骨まで付着しています。
主な作用は、
・手関節を屈曲させる
・小指側に手首を倒す
という動きです。

円回内筋
円回内筋は、
上腕骨内側上顆と尺骨鈎状突起から始まり、
回内筋粗面まで付着しています。
作用は、
・前腕の内返し
・肘関節の屈曲
です。

なぜ内側上顆が痛くなりやすいのか
ここで重要なポイントです。
今紹介した
尺側手根屈筋
円回内筋
この2つの筋肉、
どちらも
上腕骨内側上顆
に付着しています。
つまり、
ボールを投げるたびに、
内側上顆には
繰り返し強いストレス(負担)
がかかっているということです。
これが、
野球肘で最も多い
内側型の野球肘
が起こる大きな理由です。

野球肘の最大の原因「オーバーユーズ」
野球肘の原因として、最も多いのが
オーバーユーズ
です。
ちょっとカッコよく言いましたが、
早い話が
使いすぎ
です。
子供の身体は、
骨も筋肉も、まだ発達途中です。
スピードやパワーが出てきても、
それに骨や筋肉が追いついていないことがあります。
特に問題になるのが
骨
です。
子供の骨はまだ完成していない
子供の骨には、
骨端軟骨
と呼ばれる部分があります。
これは、骨の端にある
成長のための軟骨
です。
骨を長く成長させるためには、
ある程度の柔らかさが必要です。
でも、
柔らかいということは、
外からの力に弱い
ということでもあります。
筋肉が骨を引っ張るとどうなるか
筋肉は骨に付着しています。
オーバーユーズで筋肉を使いすぎると、
筋肉は骨を強く引っ張ります。
大人の骨なら、
ある程度は耐えられます。
でも、
柔らかい子供の骨
ではどうなるでしょうか。
イメージしてみてください。
柔らかいスライムを指で引っ張ると、
伸びますよね。
骨端軟骨も、これと似たようなことが起こります。
すぐに折れたりはしませんが、
筋肉や腱には細かい傷が積み重なっていきます。
その結果、
投げようとすると痛みが出る。
これが野球肘の始まりです。
重症化するとどうなるか
さらに負担が続いたり、
強い外力が加わると、
・筋肉や腱の部分断裂
・骨側が耐えきれず、付着部が剥がれる
といったことも起こり得ます。
外側・後側に起こる野球肘
野球肘は、内側だけではありません。
外側の場合
投球動作では、
肘の内側が引き伸ばされ、
外側は押し潰されます。
負担が強くなると、
橈骨と上腕骨が作る関節が圧迫され、
中で炎症が起こったり、
軟骨が剥がれてしまうこともあります。
後側の場合
肘を素早く伸ばす動作を繰り返すことで、
尺骨の鉤爪状の突起が、
上腕骨に何度もぶつかります。
これが続くと、
疲労骨折
を起こすこともあります。
このタイプは、
骨端軟骨が癒合してきた
中学生〜高校生
に多く見られます。

少年野球で起こる肘のスポーツ障害
ここからは後半です。
前半では、肘の解剖学的な構造と、野球肘がどのようにして起こるのか、その土台となる部分を説明しました。
後半ではさらに踏み込んで、
・実際の野球動作が肘にどんな負担をかけているのか
・なぜ成長期の子供に野球肘が多いのか
・どの段階で痛みが出てくるのか
・放置するとどうなるのか
について詳しく書いていきます。
野球の投球動作をもう一度整理する
野球の投球動作は、
「腕を振って投げている」
ように見えますが、実際は全身運動です。
下半身で地面を蹴り、
その力を骨盤に伝え、
体幹を回旋させ、
肩関節が外旋し、
そこから一気に内旋・内返しへ切り替わり、
肘、手首、指先へとエネルギーが伝わります。
この一連の流れの中で、
肘は“通過点”
のような役割をしています。
ですが、この通過点で
力の伝達がうまくいかなかった場合、
そのしわ寄せがすべて肘に集中します。
肘は「力を受け止める関節」
肘関節の役割は、
大きな力を生み出すことではありません。
肘は
肩で生まれたスピードを受け取り、手首に伝える
という役割を担っています。
つまり、
・肩がうまく使えていない
・体幹が使えていない
・下半身の力が伝わっていない
こうした状態で投げると、
肘がその不足分を無理やり補おうとします。
これが、肘への過剰なストレスにつながります。
成長期の肘に何が起きているのか
成長期の子供の肘には、
骨端軟骨
が残っています。
この骨端軟骨は、
骨を長くするために必要な部分であり、
柔らかく、変形しやすいという特徴があります。
大人であれば
「筋肉痛で済む」
ような負担でも、
子供の場合は
骨や軟骨にダメージとして残る
ことがあります。
特に内側上顆は、
筋肉や腱が集中して付着しているため、
投球動作のたびに
引っ張られる力が加わります。
これが繰り返されることで、
骨端軟骨に微細な損傷が起こり、
やがて痛みとして表面化します。
なぜ最初は「軽い痛み」なのか
野球肘の厄介な点は、
最初は我慢できてしまう痛み
であることです。
・少し違和感がある
・投げ終わったあとに肘が重い
・全力投球の時だけ痛い
この段階では、
日常生活にはほとんど支障がありません。
そのため、
「ちょっと疲れてるだけ」
「寝たら治るやろ」
と見過ごされがちです。
しかし、内部では
骨・腱・筋肉へのダメージが
少しずつ蓄積しています。
痛みが強くなっていく流れ
野球肘は、ある日突然重症化するわけではありません。
多くの場合、
次のような順番で進行します。
・投球時のみ痛い
・投球後も違和感が残る
・ウォーミングアップ中から痛い
・日常動作でも痛みが出る
ここまで進むと、
肘の組織はかなり傷んでいる状態です。
特に成長期では、
骨の成長そのものに影響が出る
可能性もあります。
外側型・後方型が起こる理由
内側型が多いとはいえ、
外側や後方にも野球肘は起こります。
外側型
投球時、
肘の外側は
強く押し潰される方向の力
がかかります。
これが繰り返されると、
橈骨と上腕骨が作る関節部分で
炎症が起きたり、
軟骨が傷ついたりします。
進行すると、
肘の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなり、
引っかかり感やロッキング症状が出ることもあります。
後方型
肘を勢いよく伸ばす動作を何度も繰り返すと、
尺骨の突起が上腕骨に強く衝突します。
これが慢性的に続くことで、
骨同士がぶつかり続け、
疲労骨折を起こすケースもあります。
このタイプは、
中学生後半から高校生に多く見られます。
「投げすぎ」だけが原因ではない
ここで大切なことを書きます。
野球肘は
投球数が多いから起こる
だけではありません。
・回復が追いついていない
・フォームが安定していない
・成長スピードと運動強度が合っていない
こうした要素が重なることで、
肘は限界を迎えます。
特に
「急に球が速くなった時期」
「身長が伸び始めた時期」
は要注意です。
筋力や骨の強度が追いつかず、
肘に負担が集中しやすくなります。
野球肘は“未来の問題”でもある
野球肘を軽く考えてはいけない理由は、
将来に影響する可能性がある
からです。
子供の身体は、
そのまま大人の身体の土台になります。
成長期に負ったダメージは、
・慢性的な肘痛
・可動域制限
・力の入りにくさ
などとして残ることがあります。
野球を続けるかどうかに関わらず、
肘は一生使う関節です。
だからこそ「次」が大事
今回は
肘の構造と、
野球肘が起こるメカニズムを中心に書きました。
次回は、
・実際の投球フォームで何が負担になりやすいのか
・子供の肘を守るために周囲ができること
・痛みが出たときの正しい判断
について、さらに具体的に書いていきます。
知っているか知らないかで、
守れる未来は大きく変わります。
ぜひ次回も読んでください。
宮本








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