夜中に目が覚める、じんわりとした手のしびれ
こんにちは、吉田です!
今回ご紹介するのは、事務職として働く30代の女性のお話です。数か月前から、右手の親指、人差し指、中指に、じんわりとしたしびれを感じるようになっていました。最初は「少し手が疲れているだけかな」と思い、それほど深刻には考えていなかったそうです。
ところが、しびれは少しずつ気になるようになり、特につらかったのが夜でした。眠っている途中に手の痛みやしびれで目が覚めてしまうことが、週に何度も起こるようになったのです。いったん目が覚めると、手の置き場所を変えたり、手を振ったりしながら、症状が落ち着くのを待たなければなりません。
ぐっすり眠れない日が続くと、当然、翌朝もすっきりしません。昼間の仕事中にも眠気や疲れを感じるようになり、「また今晩も痛くなるのでは」と、夜になること自体が不安になっていました。
仕事内容を詳しく聞くと、日中は長時間のパソコン作業が中心でした。さらに、仕事が終わってからは、ベッドに入ってスマートフォンを見るのが毎日の習慣になっていました。腕や手首を休めているつもりでも、実際には一日の大半で、指や手首を使い続けていたことになります。
手根管症候群では、親指、人差し指、中指を中心に、しびれやピリピリした感覚が現れることがあります。また、夜間やスマートフォンなどを持っているときに症状が出たり、しびれによって睡眠中に目が覚めたりする場合があります。ただし、手のしびれには首や肘、糖尿病など、ほかの原因が関係することもあります。そのため、症状の場所だけで原因を決めつけることはできません。
「これくらいなら、そのうち治るだろう」と我慢していたものの、眠れない状態が続いたことで、ようやく体の状態を見直そうと思われたそうです。手のしびれだけでなく、眠れないことや仕事への集中力低下まで重なり、心身ともに疲れ切った状態からのスタートでした。
Mayo Clinic「Carpal tunnel syndrome – Symptoms and causes」
手根管症候群では、親指、人差し指、中指などのしびれ、夜間の症状、母指周辺の筋力低下などがみられると説明されています。
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/carpal-tunnel-syndrome/symptoms-causes/syc-20355603
手首だけを見るのではなく、しびれの原因を探る
まずは、いつから症状が始まったのか、どの指がしびれるのか、昼と夜のどちらがつらいのか、仕事や日常生活で手をどのように使っているのかを詳しく確認しました。しびれは目に見えないため、本人にしか分からない感覚を、できるだけ具体的に整理することが大切です。
手首を曲げた状態で症状の変化を確認するファーレンテストでは、普段感じているしびれが現れました。また、手首の正中神経付近を軽く刺激して確認するチネルサインでも、指先に響くような感覚がみられました。さらに、親指には以前より力が入りにくく、前腕の筋肉もパンパンに張っていました。
ファーレンテストやチネルサインは、手根管症候群を疑う際に行われる確認方法の一つです。しかし、これらが陽性になったからといって、それだけで診断が確定するわけではありません。症状が強い場合や、筋力低下がある場合には、整形外科などで診察を受け、必要に応じて神経伝導検査、筋電図検査、超音波検査などを受けることも重要です。
今回の状態からは、手首にある手根管という狭い通り道で、正中神経に負担がかかっている可能性が考えられました。ただし、気になったのは手首だけではありません。肘から手首まで続く前腕の筋肉が非常に硬くなり、腕全体に余裕がなくなっていました。
長時間キーボードを操作すると、指を動かす筋肉は休む間もなく働き続けます。そこへ夜間のスマートフォン操作が加わり、手首を曲げた姿勢が長く続いていました。手首だけを揉んで終わるのではなく、仕事中の姿勢、前腕の緊張、夜の過ごし方まで含めて考える必要がある状態でした。
本人は「パソコンを使う限り、もう治らないのでは」と半ば諦めていました。しかし、事務職を続ける以上、パソコンを完全にやめることは現実的ではありません。大切なのは、仕事を諦めることではなく、手や腕にかかる負担を一つずつ減らし、働きながら回復を目指せる環境をつくることでした。
Cleveland Clinic「Phalen’s Test: What It Is & How It’s Performed」
ファーレンテストとチネルサインは、手根管症候群が疑われる場合に行われる身体検査ですが、診断は症状やほかの検査も含めて総合的に行われます。
https://my.clevelandclinic.org/health/diagnostics/25133-phalens-test

眠れない毎日から抜け出すために始めたこと
施術では、手首だけに集中するのではなく、負担が強くなっていた前腕を含めて状態を整えていきました。まず、前腕の手首に近い部分へ超音波施術を行いました。超音波は、人の耳には聞こえない高い周波数の振動を体内へ伝える機器です。症状や体の状態を確認しながら、使用する場所や出力を調整します。
さらに、特に緊張が強くなっていた腕の筋肉に対して鍼施術を行い、必要な箇所には鍼へ低周波の電気刺激を加えるパルス鍼を用いました。深い部分にある筋肉の緊張を和らげ、前腕全体が動きやすくなることを目的として行いました。
ただし、超音波や鍼灸を行えば、手根管症候群が必ず改善すると断定することはできません。症状の程度や原因には個人差があり、筋力低下が進んでいる場合、しびれが常に続く場合、物を落とすことが増えた場合などは、医療機関での評価が優先されます。
今回も、「施術を受けているから、家では何もしなくてよい」という考え方では進めませんでした。日中に何時間もパソコンを使い、夜も手首へ負担がかかる生活が続けば、施術の時間だけで状況を変えることは難しいからです。
最初に見直したのは、キーボードの位置でした。キーボードが体から遠すぎたり、高すぎたりすると、前腕が浮いたまま作業することになります。そこで、無理なく肘を曲げられる位置へキーボードを移動し、手首だけでなく前腕を広く支えられる環境を提案しました。
リストレストも、手首を強く押しつけるためのものではありません。手首を反らしたり、曲げ込んだりした状態が長く続かないよう、作業姿勢を補助する目的で使用します。仕事を辞めることも、パソコンを捨てることもできません。しかし、机の上の数センチを見直すだけなら、その日から始められます。
そして、もう一つの大きな課題が、夜のスマートフォンでした。「一日の楽しみなので、完全にやめるのは無理です」と笑っていましたが、そこは無理に禁止しません。まずは使用時間を少し短くし、手首を曲げたまま持ち続けないようにするところから始めました。
一度に生活を全部変えようとすると、多くの人は途中で嫌になってしまいます。最初から完璧を目指すのではなく、できることを一つだけ増やす。眠れない夜が続き、仕事にも自信を失いかけていましたが、ここから少しずつ、日常を取り戻すための挑戦が始まりました。
Hospital for Special Surgery「Carpal Tunnel Syndrome: Wrist Nerve Pain & Treatment」
手根管症候群の保存的な対応として、手首の動作を減らす活動調整や、睡眠時・パソコン作業時に手首をまっすぐ保つ装具などが紹介されています。
https://www.hss.edu/health-library/conditions-and-treatments/carpal-tunnel-syndrome-causes-diagnosis-treatments

小さな見直しを毎日続けることが、一番難しかった
施術を始めたからといって、翌日からすべてのしびれが消えたわけではありません。
「朝まで眠れました」2週間後に見え始めた変化
施術とセルフケアを根気強く続けてもらい、約2週間が経過したころ、少しずつ変化が現れました。 来院されたとき、いつもより表情が明るかったので尋ねてみると、「久しぶりに朝までぐっすり眠れた日がありました」と笑顔で話してくださいました。 それまでは、手の痛みやしびれで週に何度も目が覚めていました。
6週間後、もう一度パソコンに向き合えるように
施術と生活環境の見直しを続け、6週間が経過しました。 再びファーレンテストを行ったところ、以前のようなしびれは誘発されず、陰性へと変化していました。












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