ケーラー病とは?子どもの足に起こる骨のトラブルをやさしく解説

ケーラー病は、子どもの足に起こる病気のひとつです。

足の真ん中から少し内側にある「舟状骨(しゅうじょうこつ)」という骨が、一時的に弱ってしまうことで起こります。

「弱る」と聞くとわかりにくいかもしれませんが、これは骨に十分な血液が届きにくくなり、骨が元気をなくしてしまう状態です。医学ではこれを「骨壊死(こつえし)」と呼びます。難しい言葉ですが、簡単に言えば「骨の栄養不足」です。

この病気は大人よりも子どもに多く、特に3歳から10歳くらいの年齢で見つかりやすいとされています。男の子に多いことも知られています。足の骨の中でも舟状骨は、歩く、走る、止まるといった動きの中で、体重を受け止める大事な役割をしています。そのため、この骨が弱ると歩き方に変化が出たり、足を痛がったりするようになります。

ケーラー病という名前は、最初にこの病気を報告した医師の名前からついています。珍しい病気ではありますが、整形外科では昔から知られている病気です。

出典:https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/osteonecrosis/symptoms-causes/syc-20352522

ケーラー病はなぜ起こるのか

 

 

原因はひとつだけとは言い切れませんが、今よく考えられているのは、成長するスピードと血液の届き方のバランスが一時的に崩れるという考え方です。

子どもの体はどんどん大きくなります。骨も同じように成長していきますが、骨が元気に育つためには、酸素や栄養を運ぶ血液がしっかり届く必要があります。ところが舟状骨は、もともと足の中でも血液の流れが十分ではないと考えられている場所です。そこに成長や荷重が重なると、骨の一部が栄養不足になりやすくなります。

さらに、普段の生活でも足にはかなりの力がかかっています。学校で歩く、走る、階段をのぼる、外で遊ぶ。こうした毎日の動きだけでも、足の骨には繰り返し負担がかかります。まだしっかり育ちきっていない舟状骨にその力が集中すると、骨がつぶれたり形が変わったりしやすくなります。

足の形も関係すると言われています。土踏まずが低い子どもや、扁平足(へんぺいそく。土踏まずが少ない足)の傾向がある子どもでは、舟状骨に余分な力がかかりやすいことがあります。また、骨になるタイミングが少し遅い子どもでは、その分だけ弱い時期が長くなり、発症しやすくなる可能性があります。

つまりケーラー病は、ひとことで言えば、

まだ成長途中の骨に、血流の弱さと日常の負担が重なって起こる病気

と考えると理解しやすいです。

出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK547740/

 

どんな症状が出やすいのか
 

ケーラー病の特徴は、突然激しく始まるというより、少しずつ気づかれることが多い点です。最初は「なんとなく足を痛がる」「今日は歩き方が変かな」といった程度で始まることもあります。

もっとも多いのは、足の内側から真ん中あたりの痛みです。場所でいうと、土踏まずの少し上あたりを押したときに痛がることが多いです。歩くと痛い、走ると痛い、押すと嫌がる。こうした反応が見られることがあります。

また、痛みを避けようとして歩き方が変わることもよくあります。足の外側に体重をのせるようになったり、少し引きずるような歩き方になったりします。家の中では気づきにくくても、学校の帰り道や運動のあとに目立つことがあります。

見た目ではっきり大きく腫れるとは限りませんが、舟状骨のあたりがややふくらんで見えたり、触ると少し熱っぽかったりすることもあります。そして安静にしていると落ち着くのに、体育や外遊びのあとにはまた痛みが強くなる、という流れもよくあります。

子ども自身がうまく説明できないことも多いので、親御さんが

「最近、片足をかばっている」

「前より走りたがらない」

「靴をはくときに嫌がる」

といった変化に気づくことがとても大切です。

骨の中では何が起きているのか
 

ケーラー病を理解するうえで大切なのは、骨の中の変化を順番にイメージすることです。

まず最初に起きるのは、舟状骨への血液の流れが一時的に悪くなることです。骨は外から見ると固く見えますが、中では血管が栄養を運んでいます。その流れが弱くなると、骨を保つ細胞が元気を失っていきます。

次に、骨そのものが弱くなります。そこへ毎日の体重や運動の力が何度もかかると、弱った骨が押しつぶされるような形になっていきます。レントゲンでは、骨が白く硬く見えたり、横につぶれたように見えたりすることがあります。

ただし、ケーラー病で大事なのはここからです。

子どもの骨には回復する力が強いという特徴があります。時間がたつと新しい血管が育ち、ふたたび栄養が届くようになります。そうすると、弱っていた骨の部分も少しずつ作り直され、形も回復していきます。

このため、ケーラー病は「一時的に骨が弱る病気」ではありますが、きちんと見守りながら負担を減らしていけば、自然によくなることが多い病気です。

出典:https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/osteochondroses

どのように治療するのか
 

治療の基本は、骨を守りながら、自然に回復するのを待つことです。手術が必要になることはほとんどありません。

まず大切なのは、痛みが強い時期に無理をしないことです。走る、飛ぶ、長く歩くといった足に強い負担がかかる動きは控えます。ただし、完全に寝たきりのようにするという意味ではなく、痛みが悪化しない範囲で日常生活を送ることが基本です。

必要に応じて、靴の中に入れるインソールや足底板(そくていばん)を使うことがあります。これは舟状骨だけに力が集中しないように、足裏全体で支えるようにするためのものです。土踏まずを支えるタイプが多く、歩いたときの衝撃をやわらげる役割もあります。

痛みが強い場合には、ギプスで一定期間固定することもあります。骨にかかる負担を減らし、回復しやすい環境をつくるためです。松葉杖が必要になることもあるため、学校生活への配慮も大切になります。

また、医師の判断で痛み止めを使うこともあります。これは病気を直接治すというより、日常生活のつらさを軽くするための補助です。

整形外科では、治療を始めて終わりではなく、経過を見ながらレントゲンなどで回復の様子を確認していきます。焦らず、でも放置せず、定期的に状態を見ることが大切です。

出典:https://www.clevelandclinic.org/health/diseases/24875-kohler-disease

子どもの生活にはどんな影響が出るのか
 

ケーラー病になると、子どもの毎日の生活には思った以上に変化が出ます。

たとえば学校では、体育の授業で走れない、ジャンプできない、長時間立っているのがつらい、といったことが起こります。友達は普通に遊んでいるのに自分だけ見学になると、気持ちが落ち込むこともあります。放課後も、サッカーや鬼ごっこなどの足をよく使う遊びには参加しにくくなります。

家では、「今日は歩きたくない」「もう休みたい」と言うことが増えるかもしれません。周りから見ると元気そうに見えても、足の中では痛みが出ていることがあります。だからこそ、大人が「怠けているのかな」と決めつけず、体のサインとして受け止めることが大切です。

靴選びも変わることがあります。インソールを入れるために少し余裕のある靴が必要になることもありますし、底が薄すぎる靴や足を支えにくい靴は合わないことがあります。

親御さんにとって大事なのは、症状そのものを見ることだけではありません。子どもの気持ちに寄り添うことも大切です。

「今は骨が休んでいる時期だよ」

「ちゃんと治ればまた走れるよ」

そんなふうに説明してあげるだけでも、安心感は変わります。

どれくらいで治るのか
 

ケーラー病は、多くの場合自然によくなる病気です。回復までの期間には個人差がありますが、数か月で症状が軽くなる子もいれば、しっかり骨の形が整うまでに1〜2年ほどかかることもあります。

一般的には、最初の数か月は痛みや歩き方の変化が出やすく、そのあと少しずつ骨の回復が進んでいきます。時間とともに痛みは軽くなり、動きも元に戻っていくことが多いです。

将来的な見通しは基本的に良好です。適切に整形外科で診てもらい、無理を避けながら経過を見ていけば、大人になってから大きな問題を残さないことがほとんどです。

ただし、「そのうち治るだろう」と思って無理を続けるのはよくありません。痛みがあるのに運動を続けたり、診察を受けずに放っておいたりすると、回復までに余計な時間がかかることがあります。自然に治る病気だからこそ、正しく見守ることが大切です。

出典:https://www.rch.org.au/kidsinfo/fact_sheets/Kohler_disease/

似ているほかの病気との違い
 

足の甲や内側の痛みがあるからといって、必ずしもケーラー病とは限りません。似た症状を出す病気はいくつかあります。

たとえば、転んだあとやぶつけたあとであれば、捻挫や骨折の可能性があります。ケーラー病との違いは、きっかけとなるはっきりしたケガがあるかどうかです。

また、副舟状骨症候群(ふくしゅうじょうこつしょうこうぐん)といって、舟状骨の近くにある余分な骨が痛みの原因になることもあります。扁平足そのもので足の内側が疲れやすく、痛みが出ることもあります。

さらにまれではありますが、感染や炎症性の病気が関係することもあります。熱がある、強く腫れている、じっとしていてもかなり痛い、という場合は早めの診察が必要です。

こうした病気を見分けるためには、整形外科での診察とレントゲン検査が重要です。見た目だけでは区別しにくいこともあるため、自己判断は避けた方が安全です。

まとめ
 

ケーラー病は、子どもの足の舟状骨に起こる一時的な骨のトラブルです。成長途中の骨に対して、血流の弱さや毎日の負担が重なることで起こると考えられています。

主なサインは、足の内側の痛み、歩き方の変化、運動後の痛みの強まりなどです。見つけたときに大切なのは、無理をさせず、整形外科で正しく診てもらうことです。

治療の中心は保存療法で、安静、インソール、必要に応じた固定、そして経過観察が基本になります。多くの子どもは時間とともに回復し、日常生活に戻っていきます。

「少し歩き方が変かもしれない」

「最近、足を痛がることが増えた」

そう感じたら、早めに相談することが安心につながります。