プロレスラーは怪我しないのか?データからわかるプロレスラーの怪我の多い部位とは?

格闘技と怪我は切っても切れない関係です

私は高校時代、柔道部に所属していました。そこから格闘技の道に入り、25歳で総合格闘技と柔術を始め、33歳でプロレスラーとしてデビューしました。今年で17年目になります。

プロレスラーは怪我をしないのか?普通にします笑

不全骨折は怪我じゃない!みたいな都市伝説もありますが、試合に穴を空けるくらいなら、まあそれは出ますね笑

振り返れば、人生の半分以上を格闘技と共に生きてきました。そしてその時間は、怪我と共にあったと言っても過言ではありません。

両足関節を同日に捻挫したこともあります。右肩関節脱臼、アキレス腱断裂、膝関節靭帯損傷。どれも軽いものではありません。それでもテーピングを巻き、サポーターを装着し、痛みを抱えながら練習を重ね、試合に出続けてきました。

当時は「怪我は勲章」「痛みに耐えてこそ一流」そんな空気がありました。実際、私もそう思っていました。

でも今は違います。怪我は避けられない部分もありますが、放置していいものではありません。そして、正しい知識があれば防げる怪我も多く存在します。

学生時代に行った“怪我の実態調査”

これは私が専門学生だった頃の話です。授業の一環で怪我に関する研究を行う機会をいただきました。

私は、自分が通っていた格闘技ジムでアンケート調査を実施しました。難しく言えば「総合格闘技における負傷多発部位の調査」です。

ですが、私の本音はシンプルでした。「みんなどこを一番怪我しているのか」「なぜそこを傷めるのか」それを知りたかったのです。

対象は42名。平均身長171.4cm、平均体重69.9kg。年齢は15歳から54歳まで。週平均練習日数は3日、1回の練習時間は2〜3時間。真剣に競技へ取り組んでいる選手たちです。

1年間で半数以上が怪我により練習を休んでいる

「過去1年間で、格闘技が原因と考えられる怪我で1日以上練習を休んだことがありますか?」

ある 23人
ない 20人

半数以上が怪我により練習を休んでいました。これは決して小さい数字ではありません。

負傷部位で最も多かったのは膝(7人)。続いて指(6人)、肘(3人)、腰(3人)、大腿部(3人)でした。

症状としては、捻挫8人、靭帯損傷7人、打撲5人、半月板損傷2人、骨折2人、肉離れ2人、脱臼1人、ヘルニア1人という結果でした。

特に注目すべきは、捻挫と靭帯損傷の多さです。これは単なる打撲とは異なり、関節の安定性に大きく関わる損傷です。

怪我の多くは試合ではなくスパーリング中に起きている

怪我の発生状況を見ると、練習中6人、スパーリング中18人、試合中1人という結果でした。

つまり、本番よりも日常のスパーリングで怪我が多発しているのです。

原因として挙げられたのは、不注意5人、不可抗力8人、疲労3人、睡眠不足3人、過度の練習2人、技術不足3人などでした。

ここから分かるのは、怪我は偶発的に起きているように見えて、実はコンディションや準備不足が大きく関与しているということです。

なぜ膝関節の怪我が多いのか

今回の調査で最も多かったのは膝関節の負傷でした。

膝は構造上、曲げ伸ばしには強いですが、ひねりや側方からの力には弱い関節です。

スパーリング中の片足タックルでは、相手の肩が膝上を押さえ、両手で下腿を引き込む瞬間に強いねじれが発生します。このとき関節技に近い状態が生じ、靭帯へ過度な負荷がかかります。

さらにローキックでは、斜め上方から膝方向へ打ち落とすような衝撃が加わります。これも関節へ大きなダメージを与えます。

ヒールホールドという特異な危険性

特に注意すべきはヒールホールドです。

この技は足首を固定したまま膝を回旋させる関節技です。多くの関節技が可動域を超えて「伸ばす」のに対し、ヒールホールドは「ひねる」。

膝は回旋に対して強く抵抗できる筋肉を持っていません。そのため、力が加わった瞬間に損傷が起こりやすいのです。

しかも痛みが出る前に組織損傷が起こることもあり、非常に危険な技といえます。

出典:膝関節の捻挫についてKnee Sprain: Symptoms, Treatment & Recovery

復帰しても痛みを抱えている選手が多い現実

復帰時の状態を見ると、「まったく痛みなし」はわずか1人。「ときどき痛みがある」「我慢できる痛みがある」と答えた選手が多数でした。

現在の治癒状況でも、完治と答えたのは7人のみ。変形や可動制限が残る選手、慢性化している選手もいました。

怪我は治った“つもり”でも、完全には元に戻っていないケースが非常に多いのです。

ここまでが学生時代の調査結果です。当時は選手として「痛みに耐える側」でした。

「避けられない」と「仕方ない」はまったく別の話

ここまで学生時代の調査結果をお伝えしました。当時の私は、怪我のデータを分析しながらも、自分自身は「怪我をしながら戦う側」でした。

そして18年が経ちました。今も私は現役プロレスラーです。同時に、選手をケアする立場でもあります。

その両方を経験して、はっきり言えることがあります。

格闘技に怪我は付き物です。しかし、「付き物」と「仕方ない」は違います。

怪我が起きる競技であることと、怪我を放置していいことは別問題です。

痛みを我慢する文化が生む“慢性化”

若い頃は、痛みに耐えることが強さだと本気で思っていました。

テーピングを何重にも巻き、サポーターで固め、練習量を落とさない。それがプロ意識だと思っていました。

ですが、調査でも分かったように、多くの選手が「ときどき痛い」「我慢できる痛みがある」状態で復帰しています。

この“我慢できる痛み”が一番厄介です。

炎症が残ったまま動く。可動域が制限されたまま負荷をかける。すると周囲の筋肉が代償し、別の部位に負担が移ります。

その結果、膝をかばって腰を痛める。肩をかばって肘を痛める。こうして怪我は連鎖していきます。

膝の怪我は“治った”と感じても終わっていない

特に膝関節は注意が必要です。

靭帯損傷や半月板損傷は、痛みが落ち着いても安定性が完全に戻っているとは限りません。

わずかな不安定性が残っているだけで、スパーリング中の踏み込みや切り返しで再発するリスクが高まります。

ヒールホールドのような回旋ストレスは、一度傷んだ膝にはさらに大きな負担になります。

だからこそ「痛みが引いた=完治」ではないのです。

怪我はコンディションが崩れたときに起きる

アンケートでも、疲労や睡眠不足が原因に挙げられていました。

これは今でも変わりません。

減量期、試合前の追い込み、連日のスパーリング。疲労が抜けきらない状態で反応速度が落ちると、ほんのわずかなズレが怪我につながります。

怪我は偶然の事故ではなく、「起こりやすい条件」がそろったときに発生します。

だからコンディショニング管理は、技術練習と同じくらい重要なのです。

早期対応がキャリアを守る最大の武器

現役プロレスラーとして17年続けてこられた理由の一つは、怪我との向き合い方を変えたことです。

違和感が出たらすぐケアする。炎症期は無理をしない。必要なら練習量を調整する。

若い頃は「休む=弱い」と思っていましたが、今は違います。

適切に休むことは、長く戦うための戦略です。

痛みを我慢することが強さではありません。体を理解し、守りながら高めていくことが本当の強さです。

怪我と向き合うことは競技と真剣に向き合うこと

格闘技に怪我はゼロにはなりません。しかし最小限に抑えることは可能です。

正しいテーピング、適切なリハビリ、筋力バランスの改善、可動域の維持、そして定期的なメンテナンス。

これらを継続することで、怪我のリスクは確実に下がります。

私は選手として怪我を経験してきました。そして施術者として怪我を診てきました。

両方の立場を知っているからこそ言えます。

怪我を軽く見ると、将来必ずツケが回ります。

しかし正しく向き合えば、競技人生は確実に伸ばせます。

リングの上で長く戦うために。練習場で最高のパフォーマンスを出し続けるために。

怪我は敵ではありません。体からのサインです。

そのサインを無視するか、活かすか。

そこが分かれ道です。

プロレスのお怪我は任せてください笑

岸和田や貝塚のプロレス好きの方はぜひ!裏話なんかもお話しします。

吉田

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