【子どものパフォーマンスを伸ばす“声かけ”──後半】
ミス・スランプ・試合中・試合後…場面別で最強の声かけ
前半では、子どもの心を整える“声かけの基本”を話した。
後半ではもっと実戦的な、スポーツの現場で使える具体的な声かけを書いていく。
前半を読んで気づいた人もいると思うが、
声かけの本質は「心をフローに戻すこと」。
つまり、
① 子どもの心が乱れる瞬間を見抜く
② その乱れを“数秒”で整える言葉をかける
スポーツの現場では、プレイそのものよりも、
この“心の処理”のほうがパフォーマンスに直結する。
では場面別に入っていく。
① ミスした直後の声かけ
── ミスへの対応で子どもの未来が決まる**
子どもが一番ノンフローに落ちる瞬間。
それが「ミス」。
しかも小学生〜中学生は、大人が思う10倍くらい落ち込む。
そして親のほとんどが言いがちなNGワードはこれ。
「なんであんなミスしたん?」
「集中してないからや」
「次は絶対ミスしたらあかんで」
全部アウト。
ミスした子どもの脳の中は、
やってしまった
監督に怒られた
もう嫌や
自分が悪い
迷惑かけた
こんな感情で埋まってる。
そこに“追い詰める系の言葉”を投げると、
その子の中の火は一瞬で消える。
じゃあ正解は何か?
◆ ミス直後の最強ワード
「よし、切り替えよう」
「まだ試合は続いてるよ」
「次の一球、どうする?」
「今のプレーから何を学べる?」
この4つは全スポーツで使える“万能薬”。
特に、
「次どうする?」
この言葉が強い。
ミスは過去。
意識を未来へ向けると、脳はフロー状態に戻る。
大人でも同じで、仕事の失敗を引きずる人は
“次どうする”と考えられていない。
ミスの瞬間こそ、
子どもの未来のための“最大の声かけチャンス”。
② スランプの時の声かけ
── 子どもは才能を失っているのではなく、心が疲れているだけ**
誰でもスランプは来る。
打てない
投げられない
ミスが続く
楽しくなくなる
親としては助けたいが、
焦ってアドバイスすると逆効果。
NGワードはこれ。
「最近どうしたん?」
「真面目にやってる?」
「気持ちの問題ちゃうか」
「練習が足りてないんと違う?」
全部、子どもをノンフローへ突き落とす。
スランプ中の子どもは、
“自分でも理由が分からない”状態。
だから親に原因を聞かれると、
ますます混乱して落ち込む。
じゃあどう声をかける?
◆ スランプの時の正しい声かけ
「最近、体しんどくない?」
「よく頑張ってるやん」
「今は積み上げてる時期やで」
「焦らんでいいで」
スランプの正体は
技術の問題ではなく“心の疲労”。
子どもは大人より刺激に敏感で、
成長期は身体的ストレスも重なる。
だから“責める言葉”ではなく
“寄り添う言葉”が必要。
特に、
「焦らんでいい」
これは強力。
焦り=ノンフロー
落ち着き=フロー
スポーツで成功する子は、
“心の復元力が高い子”。
その土台を作るのは親の声かけ。
ポジティブトークの効果についてはこちら
③ 試合中に崩れかけた時の声かけ
── たった3秒で流れは変わる**
試合中の声かけは超重要。
とくに野球・サッカー・バスケのような試合では、
“流れが悪い時間”が必ず来る。
その時に言ってはいけない言葉。
「なんでそうなるん」
「ちゃんと見てる?」
「集中集中集中!」
集中はお願いするものではなく、
自然と起きる状態。
焦って「集中して!」と言われるほど、
人間は集中できなくなる。
じゃあ何と言えばいい?
◆ 試合中に効く最強ワード
「落ち着いていこ」
「呼吸、戻して」
「いいよ、その調子」
「次のワンプレーに集中」
心を整える最短ルートは呼吸。
だから
「呼吸戻して」
これはめちゃくちゃ効く。
スポーツ科学でも証明されていて、
呼吸が整う=自律神経が整う=ミスが減る。
**◆ ④ 試合後の声かけ
── 勝ち負けより“未来の伸びしろ”を作る時間**
試合後の声かけは、
1日の中で“最も重要”。
でも多くの親がやってしまうNGワードはこれ。
「なんであの場面で…」
「もっとこうしたらいいのに」
「今日はひどかったな」
これは完全にアウト。
子どもはすでに自己評価で落ち込んでいる。
そこに追い打ちをかけると、
スポーツが嫌いになる。
では正解は?
◆ 試合後の正しい声かけ
「今日はよく頑張ったね」
「あのプレー良かったよ」
「次はどんな練習したい?」
「今日は何が楽しかった?」
特に最後の
「今日は何が楽しかった?」
これは子どもの脳をフローに戻す最強ワード。
楽しかった記憶は、
“またやりたい”につながり、
上達スピードが跳ね上がる。
**◆ ⑤ 親自身がイラッとした時の“セルフ声かけ”
── 親の感情が子どもの未来に直結する**
親だって人間。
イラつく時はイラつく。
ミス続き
不真面目な態度
練習に身が入ってない
返事が悪い
このとき親が感情任せに話すと、
その瞬間、子どもはノンフローに落ちる。
だから親自身にも“声かけ”が必要。
◆ 親へのセルフ声かけ
「今は俺(私)が乱れてる」
「落ち着いたら話そう」
「今は言わんでいい」
この3つを心の中で唱えるだけで、
子どもへの声が必ず優しくなる。
親の心が整えば、
子どもの心も短時間で整う。
**◆ ⑥ 「今、するべきことをしよう」
── 日常生活で一番使える魔法の言葉**
辻式メンタルトレーニングで繰り返し出てくるフレーズ。
「今、するべきことをしよう」
これを家でも、勉強でも、スポーツでも使ってほしい。
これは、
過去への後悔
未来への不安
この2つで乱れている心を
今この瞬間に戻す言葉。
英語で言うと、
“Just Do It.”(ナイキ)

直訳は「ただやろう」。
意味付けをしない。
難しくしない。
小細工しない。
この“心のシンプルさ”が、
フローへの最短ルート。
スポーツも仕事も人生も同じ。
**◆ まとめ
── 子どもの才能は“声かけ”で開く**
前半と後半を合わせて、
声かけの本質はひとつだけ。
子どもをフロー状態に導く。
ただそれだけ。
そしてフロー状態は、
最高のパフォーマンス
最大の集中力
楽しさ
成長速度
自己肯定感
全部の土台になる。
技術指導より先に、
心の扱い方を知ることが
子どもの才能を最速で開く。
スポーツでも、勉強でも、人生でも。










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